ジェンダー平等は家庭から

うつ病になるほど苦痛だった主婦生活で見えた理不尽なジェンダー差別の実体験を綴ります

育児と一般企業での労働条件を比較してみた

昨日、俳優の竹内結子さんが自殺されたというニュースのあと、Twitter産後うつが原因ではないかとの噂が流れた。


「2人目なのに?」などど言う人もいて、2人目で産後うつになった私にはつらい話題だった。


これを機会に、私が産後うつになったからこそ気づいた、「母親」と一般企業での労働条件を比較してみたい。(新卒採用の正社員を想定)


まずは勤務時間。

乳児を育てている時は、24時間休みなしだ。睡眠時間もろくに確保できない。

一般企業で、24時間対応が必要な業務は、3交代制なのに、育児は交代もしてもらえない。

「勤務時間」の定めもなく、24時間勤務で働くというような働き方は、一般企業では労働条件という点でアウトだ。


そして連続勤務。

育児では、24時間休みなしが、子供が産まれた直後から最低でも3ヶ月は続く。

連続3ヶ月という期間は、労災認定基準の「発病直前の3ヶ月間連続して1月あたりおおむね120時間以上の時間外労働を行なった場合」に該当する劣悪な労働環境だ。しかも、その条件には出産直後の母親の体のダメージは考慮に入れられていない


1月あたりおおむね120時間以上の時間外労働を含めた1日の労働時間は、20日勤務と計算した場合、8時間+6時間=14時間だが、乳児の母親はさらに10時間も多い上に、休日がないので30日または31日勤務だ。月30日で計算すると勤務時間は、24時間×30日=720時間。

労災認定条件では、8時間×20日+120時間=280時間。

産後うつに罹患した母親には、せめて労災程度の保障をするべきだ。


次に休暇、休憩時間の定め。

乳幼児期を過ぎたとしても、炊事や洗濯、その他の様々な仕事のために、自分のための定期的な休日や休憩時間が確保できない。休んでいたとしても、家族の都合で何かを頼まれたらそこで強制的に休憩時間が打ち切られる。これはとてもストレスだ。

それに、今の時代にまさかこんなことはないとは思うが、熱があって寝込んでいる妻に「俺のご飯は?」と言うようなとんでもない夫がいるという噂も聞く。病気休暇も認められていない仕事など、一般企業ではあり得ない話だ。

 

次に、教育や支援プログラム。


子育ては、未経験の仕事であるにもかかわらず、指導者も支援者もいない。

2人目なら未経験じゃないだろうと考える方もいると思うが、1人を育てている状態と2人を育てている状態は、全く状況が異なるので未経験とほとんど変わらない。

こういう状況も、一般企業では考えられないことだ。普通、入社したばかりの新人に大切な仕事をいきなり1人で任せる会社はないだろう。先輩社員からの指導や支援があったり、研修もあるはずだ。


それから、業務体制。

子供が1人から2人に増え、業務量が増えても、業務にあたる人員は増員されない。これも一般企業では考えにくい。少なくとも、私が勤めていた企業ではそういったことはなかった。業務量が増えれば人員は増やされるし、業務の難易度が上がれば、確実にこなせる他の人がアサインされたりヘルプが入ったりする。


他にもまだある。評価と賃金だ。

子育ては、負荷が大きい業務にもかかわらず、1円も賃金が支払われない。

一般企業では、仕事をすれば当然賃金が支払われる。

賃金が支払われるということが、仕事をする上でのモチベーションを維持するために、とても大切だということは、企業で働いた経験があれば誰でも理解できるはずだ。賃金がない状況で働かなければならないということが、どれだけ精神的に苦痛であるか、男性にも想像してみてもらいたい。


賃金という目に見える形の評価も、その他の目に見えない形の評価もほとんどない状況で、負担の大きい業務を1人で、しかも、企業で働く以上に劣悪な労働条件で行っている母親の置かれた理不尽すぎる状況を、まずは、家族が理解して環境を整えることが、母親を追い詰めないためには必要だ。


自分の子どもを育てることを「労働」とか「業務」と表現することに不快感を感じる方もいるだろう。

特に男性は、母親に対する思いが強い方が多いように感じるので、そういう方は「育児も労働だ」という主張は受け入れ難いとは思うが、育児をしている当人にとっては「労働」に他ならない。育児は、肉体労働であり感情労働でもある。また、教育や衛生管理、栄養や児童心理など、理解しておかなくてはいけないこともたくさんある、かなり難易度の高い「専門職」なのだ。

 

もし、育児は労働ではないと主張される方がいらっしゃるなら、ぜひその主張の根拠を説明していただきたいものだ。


「労働」には、適正な「労働条件」や「賃金」が必要だということは、誰もが疑いようがない事実だ。

 

適正な労働条件が確保されなければ、質の高い仕事はできない。育児にまつわる労働条件を適正にすることは、子どものためでもあるのだ。育児も「労働」として認めていただき、家庭内の労働条件の適正化をぜひ実現していただきたい。


希望する適正化項目は以下の通り

◎適正な「勤務時間」の定め

◎適正な「休日」「休憩時間」の定め

◎会社の研修だったりOJTだったり、上司先輩の支援のような、教育と支援のプログラム

◎子供の数が増えたことにより業務量が増えた場合の、追加人員の確保、または、育児のアウトソースの仕組み

◎正当に業務を行なったことに対する評価制度


ぜひ各家庭で、一度話して見ませんか?